離婚の理由
協議離婚の場合には、特に離婚理由がなくても、お互いが合意すれば離婚できます。 しかし、裁判となった場合、下記の5項目のいずれかに該当する離婚原因がないと離婚できません。 そのため、離婚協議中や離婚調停の段階から、裁判になった場合に離婚が認められるかどうか、つまり下記の5項目に該当する事実かあるかどうかを検討しておくことは非常に重要です。
不貞行為
不貞行為とは、夫や妻以外の者と性交渉をすることです。一般的には、継続的な関係が必要と考えられています。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、同居・協力・扶助.などの夫婦間の義務に違反する行為の事です。
(ギャンブルにのめり込んで働かない・生活費を渡さない・勝手に家を出てしまったなど)
しかし、1~2ヶ月程度では悪意の遺棄とは言えない場合が多く、悪意の遺棄と言えるためには、少なくとも数ヶ月~10ヶ月程度継続していることが必要です。
3年以上の生死不明
3年以上の期間、配偶者からの連絡がなく、生死も不明な場合です。
単なる行方不明ではなく、生きているのか死んでいるのか確認できない状態の場合に生死不明となります。
離婚の判決が確定したときには、その後本人が姿を現わしても、判決が取り消されたり無効になったりすることはありません。
期間が7年以上の場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てる事が出来ます。
確定すると配偶者は死亡したものとみなされ離婚が成立します。
回復の見込みがない強度の精神病
あくまでも回復の見込みがないことが必要です。
その他の婚姻を継続しがたい重大な事由
上記以外の様々な事実を考慮し、婚姻を継続しがたい状態であることが必要です。暴力、虐待、モラルハラスメント、性交渉の拒否などです。性格の不一致だけでは認められないケースがほとんどです。
多い離婚理由
離婚の原因の中で最も多い理由は、夫婦間の「性格の不一致」による離婚です。
その他では、夫側・妻側ともに多い離婚理由として異性関係(浮気・不倫)があります。
下記の事実について、離婚理由と認められるかを考えてみます。
1.性格の不一致
最も多い離婚理由ですが、性格が合わないということのみで、離婚が簡単に成立することはありません。夫婦といえども、性格に不一致があることは当たり前のことだといえるからです。
性格の不一致により、家庭生活にどのような影響が生じているか、婚姻生活を続けることが困難か、などから離婚が認められるかが判断されます。
2.異性関係(浮気・不倫)
不貞行為は法律上の離婚理由ですが、不貞行為の存在を証明する必要があります。状況証拠を積み重ねて事実を証明するしかありませんので、二人でホテルに入っていく写真や自宅に朝までいたなど有力な証拠があれば良いのですが、ない場合にはメールのやり取りや日常の二人の様子などの細かい事実から証明していく必要があります。
3.暴力(DV)
暴力や虐待により婚姻が破綻した場合、離婚理由として認められますし、身の安全のために緊急の対応が必要な場合もあります。
4.借金等の経済的問題
多額の借金があることや、借金が原因で自己破産などをしたことが、直ちに離婚原因になるわけではありません。
しかし、下記のような事情によって夫婦生活が破綻した場合には、離婚請求は認められやすくなります。
・浪費(収入に見合わない多額のお金を使ったこと)や、ギャンブル(パチンコや競馬など)のために、消費者金融から多額の借金をする
・生活費を使い込む
・自宅に消費者金融から何度も督促の電話がかかってくるなど、日常生活に支障が生じている
など
5.精神的に虐待する(モラルハラスメント)
精神的虐待による婚姻関係破綻の場合も、3.暴力(DV)と同じく、離婚原因に該当します。
したがって、離婚のみならず慰謝料などの損害賠償を請求することも可能です。
ただし、夫婦間の暴力、虐待等については、お互いが全く正反対の主張をするということも少なくありません。そのため、下記のような証拠を残すなどの対策が必要です。
・暴力によって怪我をした場合には、医師に怪我の原因を正直に言って診断書を書いてもらう
・あざができた場合には、写真を撮っておく
など
モラルハラスメントに関する詳しい説明はモラルハラスメントをご覧下さい。
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有責配偶者からの離婚請求は認められるのか?
婚姻関係を破綻させる原因をつくった側の配偶者を「有責配偶者」といいます。たとえば、夫が愛人を作り、妻と子供を置いて家を出て行ってしまった場合、夫が有責配偶者ということになります。このように自ら離婚の原因を作り出した有責配偶者から離婚を求めた場合、その請求は認められるのでしょうか。
以前は、何も悪いことをしていない配偶者にとってあまりにも酷であることから、有責配偶者からの離婚請求は認められてきませんでした。しかし、どちらに離婚理由があるとしても、完全に夫婦関係が破綻してしまっているにもかかわらず、いつまでも形だけの夫婦関係を続けるというのも不合理であるといえます。
そこで、現在の裁判実務では、このような有責配偶者からの離婚請求であっても、
①夫婦の別居期間が、同居した期間と比べて相当長期に及んでいること
②未成熟の子供がいないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況におかれるなど、離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような事情がないこと
という要件を満たすときには、離婚を認める流れになっています。
※事実関係によって判断が異なる場合もありますので、一度専門家にご相談していただくことが一番です。ぜひお気軽にご相談ください!